Blog

山岳地域を自転車で走るリスクを考える

前回の記事で、自転車での危険について考えたことが、と書きました。

今回はそれについてです。

結論から書こうと思います。

「ロードバイク、マウンテンバイクに関わらず、自転車で山岳地域に入ることは山岳遭難の危険を伴うので、野外での救急救命法などの対策が必要。」

ということです。

野外における救急救命が受講できる団体のリンクも貼っておきます。

日本山岳医学会(今回私が受講した講座です。)

ウィルダネスファーストエイド(日程の都合で山岳医学会を選びましたが、受講を検討していた講座です。各社のアウトドアガイドさんも取得しています)

野外救命法、特に救助に時間がかかる、車が行かれない場所、などに特化したものはこれらが主だと思います。(他に有力なところがあれば教えて下さい)

日程や経済的に余裕があればこれらの受講はとても有益だと思いますし、何らかの責任ある立場で人を引率してサイクリングをする方は積極的に受けるべきだと思います。

 

しかしこれらは民間のものなので、数万円とそれなりのコストがかかりますし、最低でも2日間(から5日間)の受講が必要です。

というわけで、内容は一歩下がりますが、一日で受けられる救命講習を紹介します。

2~3時間程度の心肺蘇生だけのコースもありますが、

実施するときの状況を考えると、消防が行っているものであれば上級救命講習

日本赤十字社の基礎講習+養成講習のコースが良いと思います。

日本赤十字社

公益財団法人東京防災救急協会

東京都の場合は都内各地の講習の情報を一括化してくれているのでリンクを張りましたが、他の地域では市区町村単位、県単位、地域の消防など実施の単位が違うので、「地名+救命法」などで検索すると良いです。

両方とも、教材費のみの数千円のコストで受講できるので非常にお得です。

(6/27訂正:日本赤十字の基礎+養成は3日間のコースのようです。一日では受けられません。訂正します。)

 

さて、結論は書いてしまいました。なのでそう考える理由を書きます。

私が今回受けてきた山岳ファーストエイド。当然山岳とつきますから、マウンテンバイカーとして必要性を感じ、受けたものです。

自分自身、マウンテンバイクライダーでなければ、こういった講座を受講しようとは思わなかったかも知れません。

ですが上でロードでもと書きました。この理由に、この記事を書いた動機もあります。

 

今回、講義で理解を深めることができた言葉に「高エネルギー外傷」という言葉があります。

これは、加速度を伴った衝突や高所からの転落による外傷を言います。そういった状況が明確であるか、疑われる場合には重大な内部損傷や頸椎の損傷を「あるもの」としてとらえ、直ちに固定と医療機関への搬送を行うべきものとして扱います。

(実際に全ての外傷患者の5%で頚椎損傷があり、そのうち20%に脊髄損傷があったというデータがあります。医師や救命士などのプロでも頚椎損傷は見極めるのが難しいそうです。なのである程度の状況証拠をもとに、頚椎損傷しているもの、として対応する、というのが原則なのです。)

定義は様々ですが、時速32km以上でのオートバイ等での転倒について適用するという基準を採用する場合もあります。

ロードの下りでは軽く時速40㎞位は出ますから、転倒すれば十分に高エネルギー外傷と言えます。

 

もう一つ、最近周知が進みましたが、熱中症のリスクがあります。

自転車による長時間の登坂は強度の高い運動です。脚がつった経験はかなりの方にあると思いますが、これは熱痙攣と言って立派に熱中症の一種です。放っておくと熱疲労→熱射病と進行します。

熱射病とは脱水から深部体温が40℃以上になった状態で、ここまで行くと致死率が25~50%と一気に上昇します。

良く自転車乗りの間で、暑い日のライドで頭痛がして、後から考えたら脱水からだった、という話が出ますが、これは熱射病の一段階手前の熱疲労まで進行している状態です。

更に悪いことに、脱水時は口渇感(のどの渇き)があるとは限りません。適切に水を飲んでいるつもりが全然足りていなかった、というのは良くある話です。

油断すれば熱射病まで進行しかねません。よく言う、頭がボーっとする、などは熱射病の症状である意識障害の一歩手前かも知れません。

 

それでもロードであれば救急車が来られるのではないか?

もちろん来ます。しかし時間がかかります。

 

私の家の近くに青木峠という、標高1000mほどの峠があります。

以前、ここで事故を目撃して30分後の山道で救急車とすれ違ったことがあります。

 

また、東京都民のロード乗りには有名な奥多摩周遊道路には「けがをしますと病院に収容されるまで2時間以上かかります。」という看板があるそうです。(wikipedia奥多摩周遊道路より

つまり「標高1000m程度の峠でも、救急車の到着に1時間以上かかることもありうる」

ということです。

 

 

更に単なる転倒ならばまだしも、ガードレールを越えたり下をすり抜けてしまったりしてがけ下に転落などしていたらどうでしょうか。

通常の救急車では助けに行くことも困難です。ヘリを呼ばないといけないかも知れません。

 

「高エネルギー外傷が疑われる」

「救急車の到着まで1時間以上を要する」

「ヘリ救助が必要である」

 

ほとんど山岳遭難と変わりがありません。他の車が通りかかるかもしれませんが、乗せてくれるとは限りません。

 

雄大な景色や、自転車を操る爽快感を楽しめるフィールドは多くの場合町から離れたところにあります。

町から続く舗装路の上を走っていると気づきにくいですが、ロードバイクで峠を走る(山岳地域に入る)ことは、立派なアウトドアスポーツであり、登山等と何ら変わらない心構えが必要だと、改めて思ったわけです。

 

山岳ファーストエイドの目的は、そもそも助からない人を助けようというのではありません。

救急車やヘリ、救助隊に引き継ぐまでの時間に、その場で出来る処置を最大限に、かつ可能な限り適切に行うことで、「命をつなぐ」のが目的です。

「対処を知っている人が近くにいさえすれば、もしかしたら死なずに済んだ”かもしれない”人、体が不自由にならずに済んだ”かもしれない”人」

そういう人を救うのが目的です。

勉強したからと言って必ず助けられるというわけではありませんし、アウトドアスポーツにはリスクが付き物です。

ですがたまたまそのリスクに突き当たって不幸な結果に陥る方が一人でも減ることは、そのスポーツを愛好する人に共通する願いであるはずですし、そうあってほしいと思います。

 

一人で走る人ももちろんですが、ある程度のベテランになって人を誘ったり取りまとめたりして走る人は是非、何らかの講習を受けると良いと思います。

 

そういうライダーが増えることが、長い目で見て自転車が文化として受け入れられていくことにもつながるのではないかなと思うのです。

 

 

 

 

コメントはまだありません »

コメントはまだありません。

この投稿へのコメントの RSS フィード TrackBack URL

コメントをどうぞ